成犬のトイプードル
トイプードルの10歳の成犬を引き取ることになりました。
その子はブリーダーの元でトイプードルの子犬を繁殖させるために飼育されていた雌犬で、ブリーダーの元ではまともに散歩もしたことがなかったような犬でした。
あらかじめそのような話を聞いており、長いこと人間に飼われていたといっても可愛がられて育った子ではなく、もうほとんどなつくことはないかもしれないということでした。
しかし、その話を聞いて私たちの家はそれならばうちに来てからは、懐いてくれなくてもいいから目いっぱい可愛がってあげようと決め、引き取ることにしました。
トイプードルの10歳といえばもう高齢、おばあちゃん犬です。
健康面もあまり丈夫とはいえない子でした。
警戒心バリバリのトイプードル
いざ引き取ってみると、やはり警戒心がものすごく強く、人に向かって吠えることが頻繁にありました。
ですが、逆にこれだけ元気そうなら長生きしてもらえそうだと家族一同で安心したものです。
まず散歩もろくにしたことがないという話を聞いていたので、散歩に連れて行ってあげようということになり、その子にとってははじめての散歩に繰り出すことになりました。
心配していたのですが、嫌がることもなく外ではトコトコついてきてくれました。(もちろん隣を歩くようなことは難しかったですが。)
そして興味深いことに、いろんなものが目に留まるたびにじっと立ち止まっていました。
例えば、鳩などの鳥や、その日はくもりだったのですが、雲がきれてたまに太陽の光がさすとその時もじっとして何かを考えているのか、感じているかのようでした。
はじめて目にする自然の様々なものに何かを感じ取っているのか、不思議に思っているのか、なんというか飼い主となった人間側も感じるものがありました。
散歩は毎日繰り返すうちにそういったものにも慣れてきたのか、普通に歩くようになりました。
まだまだ慣れない生活
ですが、家での過ごし方がまた大変で、とにかく言うことを聞かせることが難しかったです。
最初は一緒に遊ぶために買ったおもちゃにも、見向きもしないという場合も・・・・・・。
遊んでいるときもおもちゃでじゃれているはずだったのに、手をかまれてしまって流血沙汰なんてこともありました。
一番困ったのがご飯の問題で、家にきて最初の1ヶ月はストレスからか、ほとんど与えたご飯を食べてくれないという日が何日も続きました。
高齢犬ですし、このままではまずいと家族一同で病院に連れて行ったり、ずいぶん悩んだのですが、これに関しては1ヶ月過ぎたあたりで、急に食べてくれるようになりました。
むしろ、食べすぎというくらい食べ初めてしまい、今では太りすぎているくらいなので食事制限が大変なくらいです。
人間の食べているご飯にまで興味を示すようになり、目を離したすきにおかずをとられてしまった、ということも何度か起こりました。
本当に気をつけなければならなくなってしまいました。
警戒心が少しずつ解けていく
今思えば、それまで人間は警戒の対象でしかなかったのですが、うちに来て少しでも心を開いてくれるようになったことで、ごはんもたくさん食べてくれるようになったのかな、などとも考えています。
散歩も最初は時間になってこちらが紐をつけても動かないので、外に抱っこして連れて行くということもしていました。
ですが、今では朝の散歩の時間近くになると散歩紐をくわえて玄関の前で待っているのです。(散歩紐の場所も覚えられてしまいました…。)
時には土日に寝過ごしてしまったような日に、飼い主が寝ているところまできて吠えられてしまいます。
すっかり散歩大好き犬になってしまって、こちらとしても喜ばしいというか嬉しいかぎりです。
とにかくこの子が家にきてからは、残りの余生を楽しく生きることができるようにそればかり考えて暮らしてきたので、ここまでのびのびと暮らしてくれるようになり本当に嬉しく思っています。
最初は用意したケージの中でしか絶対に眠らなかったのですが、今ではお昼を少し過ぎたあたりになると、窓辺やリビングのソファ、いたるところで緩みきった表情で眠りこけてしまいます。
そんな表情を見せてくれるようになったことが一番嬉しいことでしょうか。
ただ、おばあちゃん犬なので、最近では足腰の不調がたまに見られるようになり、病院に通うようになりました。
足が痛いためか通常の「おすわり」の体勢がとれないらしく、足を少し横に投げ出すような形でしか今は座ることが出来ません。
最初はこんなに警戒していて、こんなに言うことも聞いてくれないのに、一緒に楽しく生活ができるのだろうかと不安になったこともありました。
ですが3年間一緒に過ごすことで、そんな不安も吹き飛んでしまいました。
何歳でもどんな境遇で育った子でも、こちらが愛情をかけて一緒に生活すれば答えてくれるようになるんだ、と実感した経験にもなりました。
現在13歳とかなりの高齢になってきたので、少しでも元気に、楽しく暮らせるように見守りながら一緒に過ごして生きたいと家族一同で考えています。