ニャンニャンはとっても可愛いいニャンコ
ニャンニャンは我が家で飼っていた猫の名前です。
頭と背中がキジトラ模様で、顔の下半分から胸やお腹にかけてはフカフカ真っ白な毛。
なかなか美人、いや美猫の女の子でした。
小柄でお澄まし顔ですが鼻先とお口の周りが薄茶なので、田吾作的愛嬌のある可愛いニャンコでした。
見た目が可愛いだけでなく、始めて見た知らない人でも、「この人誰?」と言わんばかりの様子で平気で匂いを嗅ぎに近づいていきます。
人懐っこくて好奇心旺盛で物怖じしない性格なので、みんなに可愛がられました。
ニャンニャンとの出会い
当時、自宅は一戸建ての借家でした。
休日のある日、居間で昼寝をしていると窓の外から猫同士の喧嘩の鳴き声が聞こえてきました。
近所には雌猫ながらこの辺りを仕切っている「チルおばさん」がいて、彼女の威嚇声は聞き慣れていました。
「またチルおばさんがやってる」と思ったのですが、その鳴き声がやけに近く、窓のすぐ下から聞こえてくるのです。
裏から回って見てみると、外壁沿いの植え込みからチルおばさんのお尻が見えました。
近寄るとチルおばさんは「ち、邪魔が入ったわね」とひと睨みして去って行きました。
植え込みの中を覗くと生後3ヶ月ぐらいの子猫が、イッチョマエに背中の毛を逆立て、尻尾をイッパイに膨らませていました。
この子猫がニャンニャンでした。
このまま放って置くとまたチルおばさんに苛められるかもしれないと、緊急避難的に連れ帰りました。
子猫との楽しい日々
ニャンニャンはそのまま我が家に住み着きました。
私は子供の頃に猫と暮らしていましたが、嫁さんも小学生の息子二人も猫を飼うのは初めてでした。
遊び盛りのニャンニャンと息子達は、毎日の様に家中を走り回って鬼ゴッコでした。
でも一番面白かったのは、猫という生き物をあまり知らない嫁さんとニャンニャンとのやり取りでした。
私が仕事のある平日夕方のゴハン係は嫁さんです。
ニャンニャンもそれを覚えていて、夕方は嫁さんに「ゴハン頂戴」と纏わりつきます。
休日のある夕方、台所で嫁さんが夕飯の用意をしていました。
すると嫁さんの声が・・・。
「アンタのゴハンはあとで。人様が先」
「うるさいな、もう。邪魔、邪魔」
ニャンニャンがゴハン、ゴハンとうるさく催促している様です。
そして・・・・・・
「あ、痛ッたぁ、嚙んだな!」
台所を覗くと、鍋ぶたと菜箸を両手に持った嫁さんが、足でニャンニャンを追い払っています。
ニャンニャンも引き下がる様子がなく、身構えています。
「なんで噛むのよ。もうゴハン上げないから!あなた、笑ってないでニャンニャン何とかしてよ!」
と怒る嫁さんを、半ば面白がりながら宥める私でした。
ニャンニャンは目出度くゴハンを貰えました。
嫁さんとニャンニャンはやっぱり面白い
また別の休日の朝、裏の狭い縁側で洗濯中の嫁さん。
「きゃーっ」と悲鳴が・・・。
ドウシタ、ドウシタと駆け付ける私。
「ダメ、あっち行って。こっち来ないで。持って来るなったら!」
と嫁さんは足元で見上げているニャンニャンに向かって、さかんにシッシッと手を振っています。
よく見ると、ニャンニャンの口の端で細長い尻尾がピロピロと蠢いています。
ニャンニャンがトカゲを捕まえて来たのです。
その成果を自慢すべく嫁さんに見せに戻ったのでしょう。
「見て見て、私すご~いでしょ」
と得意そうなニャンニャンの顔と、恐怖に爪先立つ嫁さんの様子が可笑しいったら・・。
嫁さんの反撃
嫁さんが台所で夕飯の準備中。今日の献立はうどんすき。
いつもの様にニャンニャンは嫁さんの足元でニャンコゴハンの催促をしていました。
その時うどんを扱っていた嫁の手から、うどんの切れ端がニャンニャンの背中にピトっと落ちました。
突然背中に異物がくっ付いたニャンニャンは、気持ちが悪くて低~い姿勢でそろそろと後退。
その様子で嫁さんはニャンニャンの弱点を発見してニヤっとしました。
うどんではブルブルと振り落としてしまうので、ガムテープの切れ端をニャンニャンの背中に張り付けます。
嫁さんの逆襲です。
ニャンニャンは低~い姿勢で歩いてはブルブル。
でも取れない。
まだ気持ち悪いので低~く歩いてはまたブルブル。
嫁さんはそれを見て大喜び。
なんとも微笑ましい風景でした。
最後のお別れ
別れはにゃんにゃん13歳の時でした。
ニャンニャンが来た頃には小学生だった息子達も独立して、彼女を看取ったのは私たち夫婦だけでした。
嫁さんはボロボロ涙を流していました。
私が思い起こしたのはニャンニャンとの出会いでした。
借家の自宅は本当はペット飼育禁止なのです。
だから実はニャンニャンまでに何匹かの猫が迷い込んで来ていたのですが、家に入れる事はありませんでした。
それがニャンニャンの場合は、チルおばさんからの緊急避難という理由で中に入れました。
そして同時にどういう訳か私は「飼おう」と決めていたのです。
大家さんに叱られたらその時はその時だとも思いました。
何故、ニャンニャンのこの時だけそんな気持ちになったのか自分でも理解できません。
敢えて説明するとしたら、それは「縁」としか言いようがありません。
ニャンニャンと出会い、そして楽しく日々を送る事が、ニャンニャンと私たちの運命だったのでしょう。
その運命に私はとても感謝をしています。
今でもニャンニャンを思い出すと心が和むのです。
ニャンニャン有難う。