高校生の時に出会った子猫
私はわんこ派ですが、高校生のときに子猫を拾って来て飼ったことがあります。
真っ黒で黄色い目でスマート、ビロードのような毛並みがきれいな普通の猫でした。
学校の近くでミーミー鳴き声がしてこの子を見付けて、連れて帰って来て部屋で飼っていました。
なぜかトイレのしつけは出来ていて、教えなくても段ボール箱(寝るためのつもりで置いたんだけど)にしていました。
たまにクローゼットに入って、お気に入りのカーディガン無茶苦茶にされたり、もらった手芸ボックスを爪とぎにされたりしましたが、それほどいたずらもしないでおとなしい子でした。
が、そのうちに、部屋の換気のために窓をすこーし開けておくと、そこから外へ出ていくようになりました。
窓を開けて、みーと何回か呼ぶとみゃーと応えて、数分で帰ってきましたけどね。
で、うちは母が猫大嫌いだったので、飼うのはいいけど(しかたないっていうか)家の中で猫に遭遇すると、ぎゃーぎゃーと大げさに騒いでいました。
母は何でも大げさなので笑える程度で済みましたが、やっぱり猫の方は嫌われているのがわかっていたのか、母のベッドの上のお布団に「うんち」をしたことがありました。
あれはどうみてもわざとで、母はやっぱりぎゃーぎゃーと騒ぎながら後始末をしていましたね。
外飼いになった猫
あと、外飼いの犬もいたのですが、猫嫌いだし猫もわんこを怖がるので会わせないようにしていました。
しかし、そのうちに猫は外へ出ていったままになって外飼いとなり、ご飯を食べにだけ帰って来るようになりました。
なんか今から考えると身もだえするほど無責任な感じがするのですが、当時は高校生だったしいろいろあったんです。
実を言えばその頃はいじめで登校拒否とかで鬱っぽくどん底状態で、こうなってしまいました。
で、猫はメスだったのですが、お腹が大きくなったのですね。
うちで動物が出産するのは初めてのことだったので、ちょっと嬉しかったです。
そしてたしか家の床下で出産、子猫が4匹生まれました。
うちで猫を飼っていると近所の猫や野良猫が集まってくるものですが、この子猫たちの模様が白と黒のぶちと、灰色の縞模様で、近所のボス猫の白と黒のぶち猫が父親だと歴然としていました。
あんな奴の子かい、と言ったものですが、そのうちに子猫たちが歩けるようになると床下から出てきました。
そのときにちょっと子猫には乗り越えるには高い障害があるので、一番小さい子は母猫が介助していたのです。
が、介助は最初だけで、次はどんなにみゃーみゃーと子猫が鳴いても母猫は見に行くことはしたけれど、介助はしない、自分で登って越えなさいといわんばかりの態度、厳しい母親だなあと思ってみていました。
信用された時の嬉しさ
しかし、子猫がご飯を置いてある庭に出るためには、ちょっと複雑なルートでした。
なので、放し飼いのわんこを家の中に入れて子猫から遠ざけて、私が抱えて家の中を通って庭に出そうとしました。
その時に一生懸命母猫に、どこかへやるんじゃない、子猫をとるんじゃないよ、と邪魔されました。
庭に連れて行くだけだからねと説明して、子猫を抱っこして庭に連れて行ったとき、母猫は何も言わずに私を信用して黙って任せてくれたのが嬉しかったです。
当時はいじめにあって人間不信だったので、にゃんこに信用されたことは今でも忘れられないですね。
子猫たちにも離乳食をあげて人間に懐くようにしましたが、この子猫たちが全部メス猫でした。
猫嫌いの母が、4匹の子猫が4匹ずつ子供を産んだら猫だらけになるとパニックを起こして、引き取ってくれる人を探して、さっさとあげてしまいました。
母猫はしばらくは子猫たちを探していたようですが、すぐに諦めたみたいでした。
これは仕方ないとはいえ、猫を裏切ったみたいで申し訳なかったです。
いなくなった猫の行方
その後もしばらく外飼いを続けていましたが、ずっと後になって母が言っていたけれど、「ご飯をあげるのはあと1年だからね」と言い聞かせていたら、きっちり1年で来なくなったということでした。
そういうことは知らなかったある日、ガラス窓に猫の影が映ったので、さっと開けたら、見たことのある野良猫がいたんです。
うちの猫の友だちだと思ったから、「うちのみーを知らない?」と声をかけてみました。
すると、私がちょっと身動きしただけで、びくっと警戒して逃げる態勢をとってました。
まったく人間に懐いていない野良猫なのに、その場で座り直して悲しい顔をして下を向いたのです。
まさかと思いつつ、もう一度聞いてみると、いっそう悲しそうな顔をして下を向くばかりでした。
ああ、これはもう、うちの猫、死んじゃったんだ、野良猫はそれを伝えに来てくれたんだと思いましたが、猫に話が通じた不思議な体験でした。
欧米では黒猫が前を通り過ぎると不吉だとか、黒猫は幸せをもたらすとか言うのですが、うちの黒猫はどうだったのかなと。
あの頃家族が入院したし、私も具合が悪くなったりでいいことなかったのだろうか、それくらいで済んでよかったのかなとか、もっと大事にしてあげなくてはいけなかったのにとか、今更のように思ってしまいます。
私もあの猫に会っていろいろ学んだことはたしかで、これは本当に今でも感謝しています。
その後は道で猫を見かけたら、みゃーと声をかけてみて、にゃんこが不思議そうにこっちを向いてくれる程度のふれあいで満足しています。